土地家屋調査士を目指しているものの、具体的にどのようなことをすればよいのかがわからずにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、土地家屋調査士になるには何をすればよいのかという疑問に答えるとともに、土地家屋調査士試験の内容や、具体的な仕事内容などを紹介します。
土地家屋調査士として活躍したいとお考えの方は、最後までご覧ください。
土地家屋調査士になるには
土地家屋調査士になるには、毎年実施されている「土地家屋調査士試験」に合格しなければなりません。
試験は二部構成で、10月に筆記試験、翌年1月に面接方式の口述試験が実施されており、口述試験は筆記試験の通過者のみ受けられます。
なお、口述試験の通過率はほぼ100%なので、合格するには筆記試験に重きをおいた受験対策や勉強法が必要です。
また、筆記試験は「午前の部」と「午後の部」に分かれており、以下の資格保有者は、午前の部の受験が免除されます。
土地家屋調査士試験の筆記試験において「午前の部」の受験が免除される資格
- 測量士
- 測量士補
- 一級建築士
- 二級建築士
こちらの記事では、土地家屋調査士になる方法に概要や業務内容などを詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
土地家屋調査士とは?仕事内容や資格の取得方法を解説
土地家屋調査士試験の内容
土地家屋調査士試験は100点満点で、解答形式および配点は「択一問題50点(2.5点×20問)」「記述問題50点(25点×2問)」です。
合格ラインの目安は70~80点ですが、例年の合格率は8~9%程度と低いので、試験の難しさがおわかりいただけるのではないでしょうか。
試験問題は「不動産登記法」「土地家屋調査士法」「民法」「土地関連」「建物関連」の5つの分野から出題されます。
各分野の出題数や解答形式、配点は以下のとおりです。
土地家屋調査士試験における分野ごとの出題数・解答形式・配点
出題の分野 | 出題数 | 解答形式 | 配点 |
不動産登記法 | 16問 | 択一 | 40点 |
土地家屋調査士法 | 3問 | 択一 | 7.5点 |
民法 | 1問 | 択一 | 2.5点 |
土地関連 | 1問 | 記述 | 25点 |
建物関連 | 1問 | 記述 | 25点 |
試験では、複雑な計算や作図をともなう問題も出されるので、時間をかけて勉強しなければ合格は難しいでしょう。
土地家屋調査士の業務内容
土地家屋調査士とは、いわば「不動産関係の法律知識と測量技術を兼ね揃えた専門家」であり、仕事として携わる分野は多岐にわたります。
主な業務内容は以下のとおりです。
業務内容①不動産の調査や測量
不動産の調査や測量作業は、土地家屋調査士の主業務です。
法務局が管理する「登記簿」に、土地の面積や建物の所在などの情報を記録するために、依頼を受けた不動産の物理的状況を調査します。
なお、調査した不動産の情報は、後述する業務においても活用されます。
業務内容②登記の申請手続きの代行
建物を新築した場合や、土地の用途を変更した場合に行う、不動産関連の申請手続きの総称を「不動産の表示に関する登記」といいます。
この手続きは、不動産の所有者に申請義務が課せられますが、記載する項目や、手続きの流れが複雑なので、個人だけで対応できないケースも少なくありません。
このような場合、土地家屋調査士であれば申請手続きを代行できます。
業務内容③筆界特定制度の申請代行
土地の範囲を区画するために、地図・公図上に引かれる線を「筆界(境界線)」、この筆界の位置を特定する手続きを「筆界特定制度(筆界特定手続)」といいます。
この、筆界特定制度の申請代行も、土地家屋調査士の業務に含まれます。
筆界の位置をめぐり、土地の所有者同士でトラブルが起きることも珍しくありません。
この場合、土地家屋調査士は、話し合いによる「裁判外紛争解決手続き」にも対応できます。
土地家屋調査士の働き方
土地家屋調査士として、法人事務所や個人事務所へ勤務する方もいれば、事務所を独立開業する方もいますが、「この働き方が正しい」という明確な答えはありません。
法人事務所や個人事務所に勤める場合、独立開業する場合それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
いずれの場合も、依頼者のスケジュールに合わせて出勤日や勤務時間を調整する必要があるため、基本的に早出や残業はあると考えましょう。
法人事務所
ほとんどの法人事務所では、業務を工程ごとに分けたうえで、それぞれに担当者をつける「分業型」というやり方が導入されています。
「登記部門」や「測量部門」などに分かれているため、所属する部門で対応する業務の知識や技術を身につけられます。
さらに、個人事務所と比較すると、法人事務所は案件の受注数も安定している傾向にあるので、仕事がなくなったり、給与がカットされたりするリスクも低いです。
しかし、分業型の「同じ部門で働き続けなければならない」という性質上、部門外の業務には携われないので、基本的には自分が所属する部門の能力しか高められません。
その結果、やりたい仕事ができずに強いストレスを感じたり、単調な仕事に飽きてしまったりすることも起こりえます。
個人事務所
規模が小さい個人事務所では、案件の全工程を1人の担当者が対応する「統括型」といわれるやり方が導入されています。
図面の作製や測量、登記手続きなどの作業を1人で対応するため、知識や技術をまんべんなく高められます。
また、「個人事務所で、土地家屋調査士として活動していた」という実績は企業からも高く評価されるので、転職活動が有利にはたらくという点もメリットです。
しかし、個人事務所は人手が限られているため、案件の対応に手が回らなくなったり、休日出勤や長時間の残業を命じられたりする可能性もあります。
また、法人事務所と比較すると、案件の受注数も安定しておらず、会社の経営状況によって給与が変動することもありえます。
独立開業
土地家屋調査士試験に合格し、日本土地家屋調査士会連合会への登録と、土地家屋調査士会への入会を済ませれば、土地家屋調査士として独立開業できます。
事業として得た収益が、そのまま個人の収入になるので、経営を軌道に乗せられたら高収入を目指せます。
また、営業時間や事務所の場所なども自由に決められるため、自身が働きやすい環境下で業務を進められるという点も特長です。
ただし、案件を継続的に受注するには、技術や知識だけではなく、依頼者からの信頼を勝ち取る「営業力」も必要です。
待つだけでは案件を受注できないので、事業を成功させるには、人脈作りや能動的な営業活動も求められるという点は覚えておきましょう。
土地家屋調査士の年収
能力や経験、就業形態などによって違いはありますが、土地家屋調査士の平均年収は約600万円です。
国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、民間企業における給与所得者の平均年収は443万円なので、土地家屋調査士は高収入を見込める職業だといえます。
なお、土地家屋調査士の年収は、年齢とともに上がる傾向にあります。
20~30代の土地家屋調査士の年収の目安は500万~600万円程度ですが、豊富な実務経験を積んでいる50代の年収の目安は700万~1,000万円程度です。
出典:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
こちらの記事では土地家屋調査士の平均年収について詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
土地家屋調査士の平均年収はどれくらい?年齢別・エリア別に解説
土地家屋調査士に向いている人の特徴
土地家屋調査士は、業務として煩雑な申請手続きをしたり、緻密な図面を作製したりしますが、これらの作業においてミスは許されません。
したがって、細かい作業でも丁寧に取り組める方や、緻密な作業が苦にならない方は、土地家屋調査士に向いています。
また、デスクワークだけではなく、測量作業や杭打ちといった現場作業も土地家屋調査士の業務に含まれます。
これらの業務は、力仕事というほどでもないので女性でも対応できますが、炎天下や長時間の作業時においては、最低限の体力が必要です。
屋外の作業を苦に感じないことも、土地家屋調査士に求められる条件だといえます。
土地家屋調査士が取得すると有利になる資格
土地家屋調査士として、従来の業務からさらに事業の幅を広げたい、あるいは業務をスムーズに進めたいとお考えの方は、資格取得を検討してみてください。
たとえば、不動産の売買や賃借などの取引にかかわる「宅地建物取引士」の資格は、土地家屋調査士の業務における、不動産の表示登記の申請時に役立ちます。
ほかにも、「ADR認定土地家屋調査士」という資格を取得すれば、不動産の所有者同士が筆界をめぐってトラブルになった場合でも、解決手続きの代理を務められます。
土地家屋調査士の活動において、これらの資格の保有は義務ではありません。
しかし、資格を取得すると、同業他社との差別化を図れるなどのアドバンテージを得られるので、収益アップにも効果が期待できます。
土地家屋調査士の将来性
土地家屋調査士の仕事は、不動産市況の景気に左右されるイメージがあるので「いずれなくなる職業」と思われがちです。
しかし、土地家屋調査士は不動産の売買時だけではなく、不動産の管理や、建物の増改築時などにも必要とされることから、需要が高い職業です。
不動産市況が悪化しても、日本に土地や建物が存在する限り、土地家屋調査士の仕事はなくなりません。
したがって、土地家屋調査士は十分に将来性が期待できる職業であるといえます。
土地家屋調査士になるには土地家屋調査士試験に合格しなければならない
いかがでしたでしょうか。
土地家屋調査士になるには、毎年実施されている「土地家屋調査士試験」に合格しなければなりません。
10月に筆記試験、翌年1月に面接方式の口述試験が実施されますが、口述試験の通過率はほぼ100%なので、筆記試験がメインだといえます。
ただし、試験の合格率が10%以下という難関資格なので、長時間勉強しなければ合格は困難です。
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