土地家屋調査士を目指しているものの、「オワコンだって本当?」「土地家屋調査士は将来性があるの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、土地家屋調査士がオワコンと言われる理由や将来性を解説します。土地家屋調査士のメリットや魅力、年収なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
土地家屋調査士がオワコンと言われる理由
土地家屋調査士がオワコンと言われる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、その理由を解説します。
理由①仕事が大変
土地家屋調査士がオワコンと言われる理由の一つに、仕事が大変な点が挙げられます。土地家屋調査士の仕事内容は、以下のように多岐にわたります。
- 役所などで土地要約書・区画整理確定図などの資料を確認
- 現地にて土地や建物の調査・測量
- 図面作成
- 境界立ち会い
- 確定測量
- 登記申請
土地や建物の調査や測量を行う場合、外で作業しなければならず、ときには草木の伐採が必要になるケースもあります。また、土地家屋調査士は、顧客のスケジュールに合わせて仕事をするのが一般的です。天候が悪いからといって別の日程に変えることはできず、悪天候の中調査をする場合もあります。
また、企業の中には古い慣習が残ったままの、いわゆるブラックな労働環境を強いるところもあります。このような理由から、土地家屋調査士がオワコン・やめとけと言われてしまうのです。
理由②景気に左右されやすい
土地家屋調査士の仕事は、不動産の取引・公共事業の建設が盛んな時期に需要が高まります。しかし、最近では景気の悪化により不動産取引の停滞や公共工事の削減などが起こり、案件が減少しています。
また、新型コロナウイルスの蔓延や世界情勢の深刻化といった問題も、不動産業界の不景気を引き起こしているのです。景気がよくなければ、物件を建設しようとするクライアントも減るため、土地家屋調査士への仕事の依頼も減少してしまいます。
理由③休日が安定しないところがある
会社に勤めている方がクライアントの場合、時間の取れる平日の夜や土日・祝日の立ち会いを求められること多く、時間外勤務や休日出勤が発生する可能性があります。平日の夜や休日の出勤に抵抗を持つ方もいるため、土地家屋調査士がオワコンだと言われてしまうのでしょう。
理由④下積みが必要
土地家屋調査士の仕事には測量や図面測定などさまざまな業務があり、それらをこなせるようになるまでは3~5年程度かかるといわれています。しかし、企業に勤めていれば給与が下がる・待遇が悪くなる心配はありません。先輩から教えてもらいながら経験を積んでいけます。
理由⑤試験の合格率が低い
土地家屋調査士試験の合格率が低い点も、オワコンだと言われる理由の一つです。土地家屋調査士の合格率は10%未満であり、国家資格の中でも難易度の高い部類に入ります。合格に必要な勉強時間は1,000時間と言われており、1日に2時間勉強しても、1年以上はかかってしまいます。
土地家屋調査士を目指す場合は、合格までのモチベーションをどう維持していくかが問題になるでしょう。
理由⑥AIに仕事が奪われる可能性がある
AI化やドローン技術の向上により、土地家屋調査士の仕事が奪われる恐れがあると言われています。ドローンを使えば、土地の状況を3Dデータとして取り込み、解析が可能です。つまり、今まで土地家屋調査士が足を使って行っていた測量作業が必要なくなってしまうということです。
また、事務処理に関する業務にも同じことがいえます。例えば、すでに会計ソフトウェアが多くの人に利用されていますが、土地家屋調査士が行う業務の専用ソフトが普及されれば、一般の人でも簡単に書類作成できるようになり、土地家屋調査士の必要性がなくなってしまう恐れもあるでしょう。
土地家屋調査士のメリットや魅力
土地家屋調査士がオワコンだといわれる理由はさまざまありますが、メリットや魅力があるのも事実です。ここでは、土地家屋調査士のメリット・魅力を解説します。
独占業務ができる
独占業務とは、資格を有するものでなければできない業務のことです。土地家屋調査士の独占業務には、土地の境界を明確にするために行われる「境界立ち会い」や「登記申請」があります。
このように、土地家屋調査士には独占業務があるため、資格がない人に仕事を取って代わられる心配はありません。
仕事・収入の幅が広い
土地家屋調査士は独立も可能です。年収は500万~600万円が相場で、高い人だと1,000万円近くになる場合もあります。土地家屋調査士は国家資格であり、調査士にしかできない独占業務があるため、重宝される仕事でもあります。
また、独立すれば新しい仕事を自分から見つけられるため、仕事の幅も広がるでしょう。
介護や育児とも両立しやすい
企業で働いている場合は勤務時間があるため難しいですが、土地家屋調査士として独立すれば、自分の都合に合わせてスケジュールや仕事量を調整しやすくなります。そのため、子育てや介護のために時間を取ることができ、仕事とプライベートをバランスよく両立できます。
測量精度が向上し、人件費の削減が可能になった
以前までは、測量をすべて人の手で行っていました。しかし、測量精度が向上しているため、昔より人件費がかからなくなっています。また、ドローンの導入・技術の向上によって測量業務が効率化しており、業務にかかる時間も減少しています。
スキル次第で高収入を目指せる
土地家屋調査士は、スキルや知識があれば、高収入を目指せる職種です。独立すれば受注数の増加により稼ぎも増えます。また、独立しない場合でも、スキルが評価されて支店長や役員クラスに昇進すれば年収も高くなります。
土地家屋調査士の将来性は?
土地家屋調査士の将来性が気になる方もいるでしょう。しかし、今後は高齢化に伴う土地の放棄や相続案件の増加が予想されます。特に、今は空き家や所有不明者の土地が問題となっており、2016年時点の所有者不明土地面積は、九州以上に存在すると報告されています(所有者不明土地問題研究会「所有者不明土地問題研究会最終報告概要」)。
そのため、所有者不明の土地の登記情報や相続人を特定する土地家屋調査士の仕事は、今後もなくなることはないといえるでしょう。
また、老朽化したビルやマンションの建て替えの時期に差し掛かっており、土地家屋調査士の需要は年々高まっています。AIやドローンの導入により仕事が少なくなると言われているものの、新しい技術により業務が効率化できれば、こなせる案件数が増えるため、仕事が増加する可能性があるといえます。
土地家屋調査士の年収はどのくらい?
土地家屋調査士の年収は、仕事の仕方によって異なります。ここでは、3つの働き方に分けて、年収をご紹介します。
正社員雇用の場合の年収
正社員として企業で働く場合の年収は、資格手当がついて400万~600万円程度です。案件数によって収入も変わるため、営業努力により収入は大きくなる可能性もあるでしょう。正社員として働いた場合、年収のピークである40代・50代には、年収800万円以上になるケースもあります。
会社の立地や取り扱う不動産の種類によっても年収は異なり、都心部の企業や規模の大きい住宅を扱う会社は、年収が高くなる傾向にあります。
補助者として働く場合の年収
土地家屋調査士の業務を補助する役割もあります。資格のない人を補助者として雇うのが通例となっており、資格の取得を目指している方が多く存在します。求人は月収20万円前後が多く、年収に換算すると240万~480万円が相場です。
独立した場合の年収
独立した場合、年収は800万~1,000万以上稼げる可能性があります。ただし、実務経験があるだけでは独立して成功は見込めません。営業能力や人脈の広さも収入に関わってくるからです。独立して収入を得るには、スキルアップはもちろん、人脈づくりや営業努力も欠かせません。
受注が少ない場合、経費や維持費の支払いにより経営が圧迫され、独立前の年収水準を下回る恐れもあります。
土地家屋調査士はオワコンではない!長く活躍するためのポイント
土地家屋調査士が長く活躍するためには、どうしたらよいのでしょうか。ここではそのポイントを解説します。
環境が良い職場で経験を積む
土地家屋調査士業界には、ブラックな企業もあります。残業が多い・休日がほとんどない・ハラスメントが横行しているといった環境では、働くこと自体が苦痛になってしまうでしょう。
そのため、適切な労働環境を提供してくれる企業や労働者の権利を尊重する職場を選ぶことが大切です。環境が良い職場であれば、長く活躍するのはもちろん、経験を積み、独立することも可能です。
考え方の合う会社を選ぶ
自分の考え方と合う会社を選びましょう。企業によって、業務の進め方や経営方針は異なります。個人事務所の場合は特に、代表の個性や考え方が強く反映される傾向があります。考え方や価値観が違っているとストレスになることもあるため、自分と同じような考え方や近い価値観を持った企業を選ぶようにしましょう。
目標とする年収を設定し行動する
目標もないまま仕事をしているとモチベーションもなくだらだらと仕事をすることになるため、高額な年収は期待できません。長く活躍し続けたいなら、目標とする年収を設定し、行動することが大切です。最近ではAIやドローンなど、新しい技術も次々と出てきているため、スキルアップも欠かせません。
とくに、独立した場合、スキルがないと判断されてしまうと次の仕事ももらえなくなってしまいます。クライアントに選んでもらえる土地家屋調査士となれるよう、日々の努力や地道な行動を怠らないようにしましょう。
土地家屋調査士として稼ぐポイント
土地家屋調査士として稼ぎたいなら、以下を意識するとよいでしょう。
- 事務所の立地条件
- 営業活動
- 実務経験を積む
- 稼げる分野に注力する
- 業務の幅を広げる
事務所の立地により、収入に差が出てきます。例えば、都会と田舎では、都会のほうが人も多いため案件も増えます。また、土地ごとの地価に合わせて報酬額も異なるため、立地条件のよい・地価の高い場所を選ぶことがポイントです。
営業活動に力を入れれば、それだけ多くの案件を獲得できます。特に、独立した場合、自分で営業活動を行わなければなりません。ホームページを開設する、ブログ・SNSで発信する、ポータルサイトに登録するなどにより、集客を行いましょう。
実務経験を積むことも欠かせません。経験がない人には仕事を頼みたいと思わないからです。資格があるだけで実務経験がない場合は、企業に勤めて経験を積みましょう。
分野によって稼げる・稼げないは変わってくるため、稼げる分野を選ぶこともポイントです。また、特定の分野を伸ばせば競合との差別化も可能です。
土地家屋調査士以外にも、行政書士や司法書士、宅建士などの資格を取得し、業務の幅を広げるのもおすすめです。独占業務で行える範囲が広がるため、年収アップも期待できます。
土地家屋調査士はオワコンではない
土地家屋調査士がオワコンと言われてしまうのは、仕事が大変・景気に左右されやすいなどの理由があるからです。しかし、独占業務ができるため、資格がない人に仕事を奪われる心配がありません。また、介護や育児と両立しやすい・高収入を目指せるといった魅力もあります。
高齢化や建物の老朽化により、今後も土地家屋調査士の仕事は増えていくと予想されます。土地家屋調査士としての目標を設定し、地道に経験を積んでいきましょう。
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