土地家屋調査士試験の午後の部は、専門知識を深く問われるため、多くの受験者にとって難関です。
この記事では、試験の構造と具体的な試験内容を詳細に解説し、効果的な勉強方法を提供します。午後の部をしっかりと対策して、多くの方が目指している土地家屋調査士の資格を手に入れましょう。
土地家屋調査士の試験内容
土地家屋調査士試験には、筆記試験と口述試験の2段階の試験が存在します。筆記試験は毎年10月に実施され、これを通過することが翌年1月の口述試験への参加資格を得る条件です。
筆記試験は「午前の部」と「午後の部」に区分されており、受験者は基本的に両方で合格する必要があります。口述試験もクリアすると、最終的に土地家屋調査士としての資格を獲得できます。
午前の部の内容(条件ありで免除が可能)
「午前の部」の試験内容について詳しく見ていきましょう。
この部分の試験は、土地および家屋の調査と測量に関する知識と技能が問われます。具体的には、以下のような内容が含まれます。
試験時間は、午前9時30分〜午前11時30分までの2時間です。試験内容は、平面測量(トランシットと平板を用いた図根測量が含まれる)と、作図(トランシットと平面を使用した図根測量が含まれる)となっています。
試験の形式としては、択一問題10問と図面作成1問が出題されます。上記が午前の部の試験内容ですが、実は条件を満たしていれば免除が可能です。その条件というのは、「測量士」「測量士補」「一級建築士」「二級建築士」のいずれかの資格を所有していることです。
午後の部の内容
午後の部の試験は、集中力と専門知識が求められます。試験時間は、午後1時〜午後3時30分までの2時間30分間です。試験形式は、20問の択一式問題と2問の記述式問題で構成されています。
続いて、択一式と記述式について詳しく見ていきましょう。
午後の部「択一式」
択一式の試験では、法律に関連する3つの科目から合計20問が出題されます。これには民法からの3問、不動産登記法からの16問、そして土地家屋調査士法からの1問が含まれています。
- 民法:法律に基づく土地や建物に関連する権利・義務についての知識。
- 登記申請手続:登記申請書の作成を含む、登記の申請手続きおよび審査請求のプロセスに関する具体的な知識。
- 土地家屋調査士法:第3条第1項に定められた1号から6号までの業務を遂行するための専門的な知識と技能。
試験の採点方式は加点制で、各問題に正解すると2.5点が加算され、全問正解時の総得点は50点です。択一式の重要性は高く、法律的な知識を確実に問われるため、しっかりと試験対策しておきましょう。
午後の部「記述式」
記述式試験では、提示された事例から、関連する申請内容を分析し、必要な座標計算や面積測定を行い、適切な図面を作成するという形で応用能力が問われます。この試験では、土地と建物に関してそれぞれ1問ずつ、合計で2問が設定されており、問題ごとに最大25点が与えられ、合わせて50点満点です。
試験の採点方式は減点制を採用しており、提出された回答の誤りに応じて点数が減らされます。ここでは、精度の高い計算と正確な図面作成が、高得点を得るためには不可欠です。記述式試験は、受験者の専門的な技術と理解度を深く評価するため、細部にわたる注意と練習が求められます。
土地家屋調査士試験の午後の部の難易度は高い?
土地家屋調査士試験の午後の部は、難易度が高いと言われることが多いです。この試験は、2時間30分の間に、20問の択一式問題と2つの記述式問題を解く必要があります。複数の計算問題と作図課題もこなさなければなりません。一見すると、時間は十分にあるように思えるかもしれませんが、実際には各問題に割り当てる時間が限られているため、効率的な時間管理が求められます。
さらに、午後の部では、土地家屋調査士として必要とされる専門的な知識と技能が試されるため、その内容の深さと範囲の広さが受験生にとって大きな壁となり合格を遠ざけています。午後の部の対策には、ただ多くの知識を身につけるだけでなく、実際の業務に即した応用能力を養うことが不可欠です。
午前の部を受ける人は少ない
土地家屋調査士試験の午前の部を受験する人は少なくなっています。これは、多くの受験者が午前の部の免除を受けることが可能な資格を持っているためです。
法務省が公表している内容によれば、令和元年度の午前の部受験者はわずか31人であり、全受験者数が4,000人近くいたのにも関わらず、この人数でした。多くの受験者が試験の効率を上げ、午後の部に集中するための戦略として午前免除を利用していると言えるでしょう。
午前の部免除のためのおすすめ資格は「測量士補」
午前の部を免除するためにおすすめの資格は「測量士補」です。この資格は合格率が40%前後と比較的高く、受験資格の制限がないため、誰でも挑戦が可能です。測量士補の試験は5月に行われるため、同年の10月に予定される土地家屋調査士試験に向けて、十分な準備時間を確保できます。
さらに、測量士補で学んだ内容は土地家屋調査士の実務に直結しており、測量の基本的な技術と知識がその後のキャリアにも大きく役立ちます。したがって、最短で合格を目指す受験生にとって、測量士補は価値のある資格と言えるでしょう。
土地家屋調査士の試験科目ごとの勉強方法
土地家屋調査士試験は、勉強することが多いです。午後の部の択一式と記述式試験では、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法、そして記述問題である「土地」と「建物」が出題されます。
これらの科目を効果的に学習することで、試験における成績を大きく向上させることが可能です。
択一式の「民法」
土地家屋調査士試験の午後の部における「民法」の試験は、総則、物権、相続の3つの分野から各1問ずつ、計3問が出題されます。これらの範囲は、民法全体の中でもとくに重要な部分をカバーしており、受験者はこれらのエリアに集中して勉強する必要があります。
民法は広範な内容を持つ科目ですが、試験では特定の部分に焦点を絞ることが有効な試験対策です。過去問を利用するのが一般的な勉強方法ですが、土地家屋調査士試験での民法出題が平成16年から始まったため、過去問の量は限られています。この問題を解決するためには、行政書士試験など他の資格試験で使用される民法の過去問も積極的に活用することが有効です。
択一式の「不動産登記法」
土地家屋調査士試験の午後の部で重要な位置を占める「不動産登記法」は、16問という多数の問題が出題され、複雑さと範囲の広さから受験生にとって大きな壁となる問題です。この科目では、不動産登記法だけでなく、「不動産登記令」「不動産登記規則」「不動産登記事務取扱手続準則」といった関連法規も含まれています。これらの法規は密接に関連しているため、横断的な理解が必要です。
さらに、過去の登記例や通達、「先例」の知識も試験で出題されます。これにより、単に法律条文を覚えるだけでなく、実際の適用方法や解釈も理解する必要があります。初学者にとって難しいのは、似ているが異なる多数の専門用語や概念を正確に理解し、区別することです。
たとえば、「表題登記」と「表題部の登記」、「所有者を証する情報」と「所有権を証する情報」、「登記済証」と「登記完了証」、「敷地権」と「敷地利用権」など、これらの用語の違いを正確に把握することです。勉強方法としては、まず基本用語と概念をしっかりと学習し、次に過去問題を解いていきましょう。不動産登記法の過去問題は比較的豊富にあり、重要な論点を網羅的にカバーできます。
過去問題を解きながら間違えた箇所や不十分な理解があった部分は、再度テキストを参照して詳しく学び直すことが効果的です。この反復学習により、理解が徐々に深まり、最終的には広範囲にわたる知識が体系的に結びついていきます。
択一式の「土地家屋調査士法」
土地家屋調査士試験で、土地家屋調査士法からは通常1問が出題されます。この科目の範囲は限定されており、比較的狭いため、効率的に学習を進めることが可能です。
学習計画を立てる際には、まず過去問題を広範囲にわたって解くことがおすすめです。これにより、試験の傾向と重要な論点を把握できます。
記述式の「土地」
記述式試験での「土地」の問題は、主に計算問題、申請書作成、作図の3つの要素から構成されています。とくに計算問題がこの部分のカギであり、受験者は座標値の計算を正確に行うことが必須です。
座標値を間違ってしまうと、その後の辺長や地積の計算に影響を及ぼし、大きな失点につながる可能性があります。このため、放射計算、交点計算、補正計算といった基本的な測量計算を完璧にマスターしておきましょう。
記述式の「建物」
記述式試験での「建物」に関する問題では、申請書作成が中心です。この問題は多様な登記パターンを理解し、それに応じた適切な申請書を効率良く作成する能力が求められます。基本的な登記形態には「表題登記」「表題部変更登記」「分割登記」「区分登記」「分棟登記」などがあります。効果的な勉強方法としては、まず基本的な登記の種類とその内容を1つひとつ確実に理解することから始めましょう。
その後、実際の例を用いて、より複雑なケースの処理方法に段階的に慣れていくことが重要です。この勉強方法を通じて、受験者は多岐にわたる登記のパターンを網羅的に把握し、どのような問題にも迅速かつ正確に対応できるようになるでしょう。
計算問題
建物に関する計算問題は、土地に関する計算に比べて複雑さは少なく、床面積の計算が中心です。ただし、試験では細かい罠が設けられることがあり、油断すると誤答につながる可能性があります。
たとえば、区分建物の計算では、実際には壁の内側線を用いて面積を計算する必要がありますが、提供される図面では壁の中心線が示されていることがあります。このような細かい罠に引っかからないように、問題文を注意して読み取るようにしましょう。
図面
図面作成では、建物の各階の平面図と全体の建物図面の作図が求められます。この作業では、建物の正確な形状を素早く捉え、図面に反映させる能力が必要です。量が多く時間も限られているため、効率的かつ迅速な作図技術が求められます。
作図は一見単純に思えるかもしれませんが、正確な線の引き方や細部にわたる注意が必要であり、実際には高度な集中力を必要とします。区分建物の建物図面を描く際には、点線と一点鎖線を使い分ける技術が求められるので、何度も練習しておきましょう。
土地家屋調査士試験の午後の部の勉強時間は1,000時間必要なのか?
土地家屋調査士試験の午後の部で合格するには、一般的に1,000時間の勉強時間が必要だと言われています。実際に多くの受験者が、1,000時間の勉強時間を確保して試験に挑むことで合格を勝ち取っています。
一般的に1〜2年の勉強期間がかかる
土地家屋調査士試験の午後の部を突破するためには、一般的に1〜2年の勉強期間が必要です。働きながら勉強していると、1日に2時間〜3時間の勉強時間を確保するのがやっとのことでしょう。このペースだと、1,000時間に到達するまで12〜16ヶ月の勉強期間がかかってしまいます。
もちろん、多くの勉強時間を確保できる方は有利です。土地家屋調査士試験は年に1回なので、勉強を開始するタイミングから逆算して1日の勉強時間を調整すると良いでしょう。
1日の勉強時間とスケジュールの目安
土地家屋調査士の午後の部に合格するための勉強時間は、毎日の勉強量によって変わります。1,000時間の学習を目標とする場合、具体的なスケジュールが重要です。たとえば、1日に5〜6時間勉強できる場合は約半年で目標を達成できます。一方、1日3時間の学習であれば1年が必要ですし、2時間だと1年半かかります。
さらに1時間半の学習では、2年間の学習期間が必要です。このように計画を立てることで、効率良く試験準備を進めることができます。
他の資格の必要な勉強時間と比較
土地家屋調査士試験の合格に必要な勉強時間は、他の法律関連や不動産関連の資格試験と比較してどのように位置づけられるでしょうか。土地家屋調査士試験に必要な1,000時間の勉強時間は、その難易度を反映しています。この勉強時間は、資格の種類によって異なり、それぞれの合格率に密接に関連しています。
法律系の資格では、司法書士は3,000時間の勉強時間が必要で合格率は約4%です。社会保険労務士は、1,000時間の学習で合格率は約6%です。
これに対して、土地家屋調査士は同じく1,000時間の勉強で合格率が約9%となっています。これは、マンション管理士や行政書士など、500時間の学習で合格率が約9%〜10%の資格と比較しても、一定の勉強量が必要であることを示しています。宅地建物取引士や管理業務主任者は300時間の学習で、合格率はそれぞれ約15%と20%です。
測量士補や賃貸不動産経営管理士はさらに勉強時間が少なく、それぞれ200時間と100時間で合格率が約30%です。このデータから、土地家屋調査士の勉強時間が他の多くの資格と比較しても相当な難易度のものであることがわかります。
午後の部の対策は東京法経学院で学びましょう
土地家屋調査士試験の午後の部は専門知識を要求される難関です。1,000時間の勉強時間を要するこの試験では、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法など広範囲の知識が求められます。効果的な学習計画と継続的な努力が成功の近道です。
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