土地家屋調査士になるには?独学でも受かる?難易度を解説

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不動産の測量や登記を専門とする「土地家屋調査士」という資格・職業をご存知でしょうか。一般的に認知度が低く、見聞きしたことがない方も多いかもしれません。しかし、不動産業界や建設業界では不可欠な存在であり、土地家屋調査士の資格がなければ違法行為に該当します。唯一無二の存在がゆえに、土地家屋調査士になるのは難しいといわれているのが現状です。

本記事では、土地家屋調査士になるために必要なステップや難易度が高いと言われる理由、独学でも受かるのかについて解説します。

土地家屋調査士とは

土地家屋調査士とは、不動産の測量と表題登記に関する専門家のこと。8士業にも数えられているエキスパート職の一つです。登記といえば司法書士が一般的なイメージですが、「表示に関する登記」は土地家屋調査士にしかできない業務です。

不動産の登記は、土地や建物の形や大きさを明らかにするための「表題部(表題登記)」と、所有権や貸借権などの「権利部(権利登記)」の2つで成り立ちます。土地家屋調査士は「表題部(表題登記)」を代理で手続きできる国家資格です。一方で、司法書士は「権利部(権利登記)」を代理で手続きできる国家資格です。

土地家屋調査士になるには?

土地家屋調査士になるためには、次のステップを踏む必要があります。

  1. 土地家屋調査士試験に合格する
  2. 土地家屋調査士名簿に登録をする
  3. 実務経験を積む

ここからは、それぞれの内容を解説していきます。

土地家屋調査士試験に合格する

土地家屋調査士になるためには、まず年に1回行われる土地家屋調査士試験を受験して合格する必要があります。受験資格に年齢や学歴などの制限はないため、誰でも受験可能です。

一次試験は筆記科目、二次試験は記述科目となっています。ただし、土地家屋調査士の合格率は8〜10%です。決して簡単な試験ではないため、しっかり学習・対策する必要があります。

土地家屋調査士名簿に登録をする

試験に合格すれば土地家屋調査士になれるわけではありません。土地家屋調査士として活動していくためには、日本土地家屋調査士会連合会の土地家屋調査士名簿への登録が必要です。登録は有料で、手数料25,000円を日本土地家屋調査士会連合会に納付しなければなりません。

土地家屋調査士は、実務経験がなくても登録できるのがメリットです。手数料を支払えば未経験でも登録できますが、土地家屋調査士として仕事をする予定がない人は登録ができないので注意してください。

実務経験を積む

土地家屋調査士として生計を立てるなら、土地家屋調査士補助者として実務経験を積む必要があります。試験に合格しただけでは知識しかないため、いざ現場に出ると戸惑ってしまいかねません。業務上ミスすれば顧客の資産に大きな損失を与えるだけではなく、所属している部署や会社に多大なる迷惑をかけることになります。

経験を積むことで、土地家屋調査士としての自信が身につき、多くの現場で活躍できるようになります。一定期間は土地家屋調査士法人や関連企業などで業務に携わりましょう。また、土地家屋調査士として実務経験を積めば、就職・転職も有利に進められます。

土地家屋調査士の試験概要

ここでは、土地家屋調査士の試験概要について解説します。試験自体の難易度が高いため、まずはどのような試験なのか概要を把握しましょう。

受験資格

土地家屋調査士の受験資格は、年齢や学歴などの制限はないため誰でも受験可能です。テキストや予備校、通信講座などを利用して試験対策をしましょう。

なお、一級建築士・二級建築士・測量士・測量士補の資格を所有している場合は午前中の試験「測量に関する試験」が免除されます。午前の試験をパスできるので、午後の試験に集中したい場合は測量士補の資格を取得した後に土地家屋調査士の試験を受験するのも手段の一つです。

試験内容

土地家屋調査士の試験は「筆記試験」と「口述試験」の2種類があります。筆記試験は午前と午後に分かれており、どちらも合格した後に口述試験を受験できます。筆記試験のみで1日の試験は終了です。筆記試験の内容については下記にまとめました。

午前の部:9時30分〜11時30分 平面測量10問/作図1問
午後の部:13時00分〜15時30分 択一:不動産登記法・民法他20問

書式:土地・建物から各1問

口述試験は、1人15分程度の面接方式による試験です。試験官による質問に対して的確に回答する試験のため、頭の回転受け答えの良さなどが重要になってきます。

質問内容としては、不動産登記法や土地家屋調査士法などです。

試験日程

試験の日程は「筆記試験」と「口述試験」に分けられます。願書の配布・受付は7月下旬〜8月中旬です。

筆記試験日 10月第3週の日曜日(合格発表1月上旬)
口述試験日 1月中旬(合格発表2月中旬)
受験地 東京、大阪、名古屋、広島、福岡、那覇、仙台、札幌、高松

なお、受験地は全国で9会場のみです。お住まいの都道府県に会場がない場合は、他県に受験しに行くことになります。

土地家屋調査士の難易度が高い理由

土地家屋調査士の試験は難易度が高いといわれています。ここでは、いくつかの理由を紹介します。

理由①計算や作図が必要

土地家屋調査士の書式問題には、計算や作図が必要です。三角関数や複素数など数学知識が求められます。数学が得意であればそこまで身構える必要はありませんが、苦手意識がある場合は解答に戸惑うかもしれません。

作図では定規を使って正しくスピーディーに作成しなければならず、記入漏れやズレが生じると減点となります。知識だけでは太刀打ちできないのが土地家屋調査士の試験です。

理由②初心者は民法対策が難しい

民法の択一では、「総則」「物権」「相続」の分野から1問ずつ出題されます。司法書士や弁護士などの資格勉強ですでに身についている場合はあまり難問ではありませんが、初心者の場合は専門用語や法律用語の理解に頭を抱えるかもしれません。3問に対して学習範囲は広いため、勉強時間を多く費やすことになるでしょう。

理由③試験時間が短い

土地家屋調査士の試験は2時間30分間で、択一式20問と記述式2問を解かなければなりません。計算するのはもちろん、測量図や建物図面などの作成も必要です。そのため、出題ボリュームに対して試験時間が短いといえるでしょう。

択一式・記述式はそれぞれ時間配分が決まっていないため、自分で時間調整する必要があります。時間を気にしながら解答しなければならないので、バランスよく解答する能力も重要です。

理由④足切り制度がある

土地家屋調査士の筆記試験には「基準点」と「合格点」が存在します。基準点はいわゆる足切り点と呼ばれ、択一式と記述式のどちらも到達しなければなりません。どちらか一方が基準点未満であれば、もう片方は採点されずに不合格となるでしょう。

そして、択一式と記述式のどちらもが基準点を上回り、合格点以上であれば、晴れて筆記試験は合格です。基準点は平均点よりも高く設定されており、合格人数も概ね決まっていることから、一定ライン以上の実力がないと合格は難しいといえます。

土地家屋調査士は独学でも受かる?

独学で合格している人は一定数いますが、ほんの一握りです。他資格で不動産や民法の学習、実務経験があれば理解がしやすくなるため、独学でも合格しやすいといえます。特に司法書士試験に合格している人であれば、不動産登記についてすでに知識があるでしょう。土地家屋調査士の試験内容に抵抗がない場合は、独学で受けてみるのも手段の一つです。

また、土地家屋調査士の試験合格には約1000時間の勉強が必要だといわれています。仕事終わりや休日に学習をするのであれば、約1〜2年かかるでしょう。土地家屋調査士に関する質の高いテキストがあまり流通していないため、独学では満足に習得できないかもしれません。難しい問題や認識の答え合わせなども独学ではできないため、かなりの労力を費やすことになるでしょう。効率よく進めたい、不動産業界や建築業界は初心者、という場合は通信講座やスクールを受講するほうが得策です。

土地家屋調査士の主な業務内容

土地家屋調査士の試験に合格して登録すれば、次のような業務に携われます。

土地や家屋の調査・測量

土地家屋調査士の主な業務内容は、不動産登記に関することです。なかでも土地家屋調査士は「表示に関する登記」を行います。新規・変更どちらも対応するため、必要に応じて現場に赴き土地や家屋の調査・測量を実施します。

不動産所有者本人が登記申請することも可能ですが、面積の調査や測量は高い専門性を必要とするため、素人が行うのは困難です。そのため、土地家屋調査士は所有者からの依頼を受け、表示に関する登記を一任します。

登記手続きの代理

土地家屋調査士は、不動産所有者からの依頼を受けて代理で表示に関する登記申請を行います。正確な図面があれば所有者本人が申請することも可能ですが、建築確認の床面積求積図から建物図面や各階平面図を作成するのは専門知識が必要です。

そのため素人では対応が難しいことから多くの場合、図面作成から法務局に届けるまでの作業を土地家屋調査士が代理で行います。

登記の審査請求手続きの代理

表示に関する登記申請を行うと、法務局の登記官が確認します。受理の可否を判断する過程で、却下されてしまうことも少なくありません。そのような場合は、所有者が担当した登記官が所属する法務局の局長に不服を申し立てる審査請求ができますが、土地家屋調査士が代理で行うことも可能です。

土地家屋調査士の業務で審査請求を行うことは多くありませんが、申請者の権利を守る重要な役割でもあります。

筆界特定の手続きの代理

隣地との筆界(境界線)が不明確な場合、適切な筆界を判断して申請する必要があります。その役割を代理で担えるのが土地家屋調査士です。申請後は登記官や筆界調査委員会が土地の調査や測量を行い、筆界の位置を判断します。

不明確な筆界を放置すると、後々トラブルに発展しかねません。筆界特定を行うことで、裁判沙汰を防げます。筆界特定もメイン業務ではありませんが、不可欠な業務であることも事実です。

土地の筆界に関する裁判外紛争解決手続きの代理

隣地との筆界が不明確でトラブルに発展した場合は、裁判前に民間人同士が話し合える裁判外紛争解決(ADR)が行われます。裁判で決着をつけるよりも、時間や費用がかからないため、できるだけ裁判外紛争解決で終えようと考える民間人が増えています。

しかし、すべての土地家屋調査士が手続きの代理ができるわけではありません。特別な研修を受講し、法務大臣から認定を受けたADR認定土地家屋調査士と弁護士が共同で代理人となれます。

不動産登記になるには試験合格と登録が必須

土地家屋調査士になるには、年に1回実施される土地家屋調査士の試験を受講して合格し、日本土地家屋調査士会連合会の土地家屋調査士名簿に登録しなければなりません。合格したら終わりではなく、登録を忘れないことが重要です。試験の難易度は高く、専門知識を身につけると同時に作図の練習もしなければなりません。学習に多くの時間を要するため、計画的に進めていきましょう。

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