土地家屋調査士はオワコン?仕事内容や今後の展望などを解説

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土地家屋調査士を目指している、あるいは資格取得の勉強を始めようか迷っていて、土地家屋調査士は「オワコン」なのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。土地家調査士は不動産登記に関する独占業務を持っており、今後も需要はなくならないと考えられます。今回は、土地家屋調査士がオワコンといわれる理由や仕事内容を踏まえた今後の展望、平均年収などを解説します。

土地家屋調査士に対する評価

土地家屋調査士は、不動産の状況を正確に登記記録に反映させるために必要な、土地や家屋の調査や測量を行う専門家のことです。測量して得た情報を登記簿に登録する業務も、土地家屋調査士の仕事です。

専門的な知識を必要とする国家資格の一つであるため、将来的に仕事がなくなる可能性は限りなく低いと考えられます。

なぜオワコンといわれるのか

土地家屋調査士は、不動産業界において欠かせない存在です。また、土地家屋調査士試験は、年によっては合格率が10%を切るほど難易度が高いとされます。必要性が高く、取得難易度も高い土地家屋調査士ですが、「オワコン」と評価されることもあるようです。ここからは、土地家屋調査士が「オワコン」といわれる理由について解説します。 

景気に左右されやすいから

土地家屋調査士がオワコン扱いされる理由の1つに、景気に左右されやすいことが挙げられます。好景気では、住宅建設などの増加に伴い業務量も増えるでしょう。しかし、景気が低迷すると不動産取引などが減少するため、土地家屋調査士への仕事の依頼数は減ってしまうことがほとんどです。

デスクワークと肉体労働のWワーク

デスクワークだけでなく、肉体労働も求められるWワークであることも、土地家屋調査士がオワコンとされる理由として挙げられます。登記業務のみを依頼するクライアントはほとんどいないため、デスクワークのみを行うわけにはいきません。

土地家屋調査士の仕事の大部分は屋外での測量業務であり、現地に機材を運び込んで作業を行います。そのため、肉体的に限界を感じて、土地家屋調査士としての仕事から離れてしまう人も珍しくありません。

さらに、測量現場は草木が生い茂っていたり起伏が激しかったりすることも多いのが現状です。そのため、土地家屋調査士を続けるには、それなりの体力を備えている必要があるといえるでしょう。

AIに仕事を奪われるといわれている

土地家屋調査士に限った話ではありませんが、いずれAIに仕事を奪われることを懸念する声が挙がっています。そして、それがオワコンとされる理由の一つです。土地家屋調査士が行う測量業務はAIとの親和性が高く、実際に、ドローンによって土地の状況を3Dデータとして取り込む、土地の標高などをデータ解析するといったことが可能になっています。

また、登記業務に関連する事務的な作業も、会計ソフトなどを使えば人手をかけずに効率的に進められるでしょう。土地家屋調査士の主要な業務がAIに代替されるようになれば、その存在意義が問われてしまうかもしれません。

こちらの記事では、土地家屋調査士の将来性についてやAI台頭の影響に関して解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士は将来性ある仕事か?AI台頭の影響も分析

専門性を伴う独占業務という事実

ここまで、土地家屋調査士がオワコンといわれる理由をご紹介してきました。それでも、土地家屋調査士が専門性を伴う独占業務であるという事実に、変わりはありません。

不動産の登記は、「表題に関する登記」と「権利に関する登記」に大別されます。権利に関する登記は、司法書士や弁護士も行なえますが、表題に関する登記は土地家屋調査士のみが行なえる、独占業務です。不動産取引がある以上、今後も必要性が高い仕事であるといえるでしょう。

世代交代見据え資格取得の好機

有資格者の世代交代を見据えると、資格取得に適したタイミングが到来しているという見方もできます。土地家屋調査士は、もっとも多いのが60代で、50代以上の方が全体の約7割を占めるといわれており、世代交代が徐々に始まっているためです。

土地家屋調査士は独立開業ができるため、一般の会社員のような定年退職制度はありません。しかし、年齢を重ねるにつれて体力や気力の衰えを感じ、第一線を退く方も少なくないのが実態です。そのため、新たに資格を取得する方にも活躍の場が用意されていると考えられます。

土地家屋調査士の平均年収

土地家屋調査士の平均年収は、おおよそ600万円前後といわれています。令和4年9月に国税庁が公表した、令和3年分「民間給与実態調査」によると、会社員の平均年収は443万円です。そのため、土地家屋調査士の年収はそれよりもかなり高い水準といえるでしょう。年収面でみると、決してオワコンではないといえます。

土地家屋調査士の平均年収が高い理由として、独占業務を持つため、参入障壁が高いことが挙げられます。ここからは、勤務形態別のおおよその年収について確認していきましょう。

会社に勤務する場合

会社に勤務する場合は、建設会社や不動産販売会社などの、不動産の表題登記に関わりのある会社が選択肢になります。そのほか、最近増えてきている労働形態としては、土地家屋調査士法人が挙げられるでしょう。社員として法人を立ち上げたり、使用人調査士として活動したりするケースもみられます。土地家屋調査士事務所で働く場合の年収は、400万円〜600万円程度です。

補助者として働く場合

補助者の月収は20万円以上、年収では300万円以上になることが多いようです。土地家屋調査試験に合格した後、個人が開業している土地家屋調査士事務所で、実務経験を得るために働くケースが該当します。

独立開業した場合

独立開業後の年収額は、本人の資質や努力に大きく左右されます。結果的に補助者として勤務していたときよりも稼ぎが減ってしまうこともあるものの、年収1,000万円以上を得ている方も多くみられます。

個人が営む土地家屋調査士事務所で補助者として数年間勤務し、その後自分の事務所を開業するのは、土地家屋調査士においてもっともポピュラーな働き方といえるでしょう。

独立しても廃業する場合がある

独立開業後の年収は、個人差が非常に大きいのが特徴です。年収1,000万円以上を獲得する土地家屋調査士もいる一方で、なかなか仕事を得られず、独立しても廃業するケースも散見されます。

独立しても廃業してしまう要因としては、「顧客を獲得できなかった」「価格設定を誤り収支が合わなかった」「開業した場所が適切でなかった」などが挙げられます。

年齢別の年収

土地家屋調査士の年収は、年齢によっても異なるでしょう。一般的には、20代では500万円前後、30代で600万円前後、50代が年収のピークで850万円前後が目安といわれています。50代が年収のピークなのは、高齢になるにつれて現地の実測などの体力を使う仕事に対応しきれなくなる傾向にあるためです。

もちろん個人差によるところが大きいため、60代以上でも高年収をキープしている土地家屋調査士も存在します。

エリア別の年収

エリア別にみると、地方よりも東京や大阪などの大都市で土地家屋調査士として活動するケースのほうが、年収は高い傾向にあるといえるでしょう。

大都市のほうが人口は多いため、不動産の取引件数も多いことが背景にあると考えられます。また、都市部に多い分譲マンションの新築時は、すべての部屋の登記を行う必要があるため、多額の報酬が発生する可能性があります。
そのほか、都市部は建物が密集しているため測量が困難であることが多く、それによって報酬が上がるという見方もできるでしょう。

土地家屋調査士のキャリアアップ方法

土地家屋調査士としてキャリアを積むには、試験合格後はまず土地家屋調査事務所などに勤務し、実務経験を積むことをおすすめします。とくに測量は、実際に経験を重ねることが重要です。測量経験がない状態で開業すると、現場で苦労する可能性が高いでしょう。

また、補助者として働きながら、自分でクライアントを開拓していくための準備をしておくと、スムーズな独立開業につながります。不動産業界の人との関係性を築いておけるとよいでしょう。

詳しくは後述しますが、行政書士や司法書士などの資格を取得し、ダブルライセンスを狙う選択肢もあります。これらの資格を取得すると、土地家屋調査士の独占業務である表題登記にくわえ、行政書士の独占業務「建築確認申請」や司法書士の独占業務「権利登記」も行なえるようになります。その結果、不動産関係の申請や登記にワンストップで対応することが出来るようになるのがメリットです。

しかし、ダブルライセンスで仕事をする場合、ほかの士業に仕事を紹介する必要がないため、相互に仕事を循環する機会が生まれにくくなります。通常は依頼を受けた仕事のうち、土地家屋調査士として対応できない部分については税理士、社会保険労務、司法書士などに仕事を紹介することが少なくありません。しかし、たとえば土地家屋調査士と行政書士の資格を保有している場合、仕事を抱え込みやすくなる反面、ほかの行政書士とお互いに仕事を循環させることは不可能になります。

また、複数の資格を保有していると、資格の登録料の支払先が増えるため、開業時の費用の負担が大きくなる点にも注意しましょう。

土地家屋調査士と合わせて取得すると効果的な保有できる資格

ここからは、土地家屋調査士と合わせて取得すると効果が見込める、「行政書士」「司法書士」「測量士・測量士補」などの資格をご紹介します。

行政書士

行政書士は、土地家屋調査士と共通する分野の業務が多いため、ダブルライセンスによって仕事の幅がより広がる可能性の高い資格です。たとえば、「農地転用の申請と農地の測量や登記」や「開発許可の申請と測量」などの業務において、登記と申請の手続きをワンストップで行なえます。

司法書士

表題登記を独占業務とする土地家屋調査士と、権利登記を独占業務とする司法書士とのダブルライセンスの最大のメリットは、登記の両輪を一人で代理できるようになることです。司法書士とのダブルライセンスによって、登記のプロとして活躍できるようになるでしょう。

測量士・測量士補

測量士と測量士補は、いずれも道路や建設現場の測量業務を担う国家資格です。両者は担当できる業務が異なります。測量士は測量に関するすべての業務を行なえますが、測量士補は「測量計画の作成」は担当できないため、測量士の作成した計画に基づき測量を行う点が特徴です。

土地家屋調査士とのダブルライセンスによって、土地家屋調査士の不動産登記と測量士の基本測量・公共測量といった、双方の独占業務を行なえるようになります。そのため、個人からも公共団体からも仕事の依頼を受けることが可能になるでしょう。

ADR認定土地家屋調査士認定を目指す手も

土地家屋調査士としてのステップアップを図るために、ADR認定土地家屋調査士認定を目指す選択肢もあります。ADR認定土地家屋調査士に認定されると、たとえば弁護士との協働での土地境界紛争において、調停代理人として関与できるようになります。

土地家屋調査士は専門性が高く、オワコンにはなり得ない仕事の一つ

土地家屋調査士は、土地や家屋の調査や測量を行う専門家のことです。景気に左右されやすいことや、デスクワークだけでなく肉体労働も求められること、AIとの親和性の高さなどから、オワコンと評価する声もあるようです。

しかし、土地家屋調査士のみが代行できる独占業務である「表題登記」を持つため、不動産取引が続く以上その需要はなくならず、今後も活躍できる職業といえるでしょう。土地家屋調査士の仕事内容に興味をお持ちなら、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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